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46話 譲れない温かい場所

Auteur: みみっく
last update Date de publication: 2025-11-06 06:00:23

 一通りの作業を終えたところで、エルが満足げな笑顔から一転、指をぴょこっと上げる。

「ねぇねぇ。リビングに大きいベッド、ないのぉ?」

 彼女は、純粋な疑問といった表情でそらを見上げた。

「もう必要なくない? 各自の部屋にベッドあるでしょ?」

 そらは、意図が分からず首を傾げた。個室とベッドを用意したのだから、リビングで寝る必要はないはずだ。

「えぇ〜〜〜」

 エルから、心底不満そうな声が漏れる。すると、アリアがすかさず勢いよく乗ってきた。

「必要だと思うのです!」

「うん、必要だと思うの」

 と、ノア。二人は、エルに同調するようにそらに訴えかける。

 まさかの……

「必要だと思いますの」

 と、優雅な口調のブロッサムまでが、きっぱりと賛同した。彼女たちの間には、強い結束が生まれているようだった。

「……うん。必要……ですね……」

 と、蚊の鳴くような声でステフまでが控えめに賛同した。彼女は、皆の意見に逆らうことができず、少し戸惑いつつも頷いたようだった。

 え、マジで?

 そらは、予想外の全員一致に、驚きで目を丸くした。個室を用意したのに、まだリビングで一緒に寝たがっているという事実に、彼の思考は追いつかなかった。

 (なんでだよ!?個室作った意味ないじゃん!)と内心で叫びつつも、そらは少女たちの純粋な眼差しに抗えない。彼女たちの「必要」という声には、抗いがたい説得力があった。彼の常識と、この幼い「家族」の理屈が、いつも微妙にズレている。でも、それがどこか心地よかった。このズレこそが、彼にとっての新しい日常であり、満たされた時間だった。

 リビングはかなり広く作ったから、スペースに問題はないけど……みんな、部屋のベッドはどうするんだ。

 そらは、深く考えるのをやめて、観念した。仕方ないので、魔法でさらに大きなベッドをリビングの隅にゆったりと設置した。そのベッドは、5人全員が横になっても、まだ余裕があるほどのサイズだった。

「やったー! ありがとう! そらくん♪」

 エルが、弾けるような声で喜びを爆発させた。

「ふっかふかなの〜!」

 ノアは、早速ベッドにダイブするように寝転がり、その柔らかさを全身で堪能している。

「これでお昼寝も完璧なのです!」

 アリアも、満足そうにベッドの感触を確かめた。ブロッサムやステフも、穏やかな笑顔を浮かべている。

 全員が満面の笑顔。その喜びが、空間全体を明るく照らした。その様子を見ていると、そらもこっちまでちょっと嬉しくなるのを感じた。設置したことに意味があったのだと、温かい気持ちに包まれた。

「じゃあ、ボクは自分の部屋で少し休むね」

 そらが、わずかな休息を求めてそう告げたその瞬間。

「リビングのベッドで休みなよ〜」

 エルが、まるで拒否権はないとばかりに、そらの肩にポンと手を置いてきた。その手には、離さないぞという強い意思が込められている。

「いやいや、俺の部屋で休むって……」

 そらが困惑した顔で言い返す間もなく、アリアが当然のように宣言した。

「わたしも一緒に行くのです」

 アリアが当然のように言ってくる。

「わたしもなの」

 ノアが、小さな体でそらに近づく。

「もちろん、わたしもぉ〜♪」

 エルまでが、茶目っ気たっぷりの笑顔で続いた。

「わたしも行こうかしら」

 ブロッサムが、優雅に微笑む。その微笑みは、有無を言わせぬ圧力を伴っていた。

 ……いや、無理でしょ。そんなに入らないし、寝られないって!

 そらは、集団で迫ってくる少女たちを前に、思わず心の中で悲鳴を上げた。自分の部屋での静かな休息は、どうやら完全に不可能らしいと悟る。

「わかったよ、わかった!じゃあ、リビングで休むよ!」

 彼は大きく息を吐き、観念してリビングの大きなベッドにダイブする。ふかふかの感触に包まれ、仰向けに寝転がると――

 ぞろぞろと、当然のようにみんなが寄ってきた。エルは隣にぴったりとくっつき、ノアとアリアはそらの両脇に陣取る。ブロッサムは足元に腰を下ろし、ステフはそっとそらのそばに寄り添う。

 休めないけど……癒されるから、まあいいか。みんなの温かい体温と、穏やかな寝息、そして無邪気な笑顔に囲まれていると、そらの心はじんわりと温かくなった。

 みんなでゴロゴロして過ごすのも、たまには悪くないね~。

 彼は、微睡みの中でそう感じた。

 ……って、あれ? これって……部屋作った意味なくない?

 そらは、満員のリビングベッドで、頭の中で冷静に状況を分析した。個室を作ったという事実と、全員がリビングに集まっているという現実のギャップに、呆然とした思いを抱く。

 あぁ、まぁ服の収納と着替えくらいには使ってくれるか。完全にでっかい衣装部屋になってるな。まあ、いいんだけどさ。

 彼は、半ば諦めと共にそう結論づけた。少女たちの満足そうな寝息を聞いていると、合理性よりもこの温かい空気を優先したくなった。

 そのうち、ちゃんと部屋を使う子も出てくる……はず。きっと。たぶん。

 そらは、薄い希望にすがりながら、自分を納得させようと試みた。

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